金胡麻(きんごま)

2016年 9月

最近では定年退職後をした当時に比べて、野菜作りへの姿勢もやや後退気味となっていて
ここ数年は新しい農作物を栽培するといったことも少なくなってきてしまいました。

そんな折に行きつけの種屋さんの店頭で金胡麻の種(3ml入りで180円)が売られており
湿地や極端な酸性土壌の畑を除けばどのような土壌にも適応し俗に日照りゴマに不作なし
といわれるほど乾燥に強く、比較的作り易いということから栽培を試みることにしました


胡麻の話あれこれ
 ゴマは、ゴマ科に属する1年草で、原産地は東インドからエジプトにまたがる地方とされ、インド、ビルマ、中国を経て日本に渡来したようです。
2006年の統計によると、胡麻の輸入16万トンに対し国内生産量は僅か200トン程度にとどまっており、国内の需要の99%以上を輸入に頼っているそうです。

主な品種は種子の色によって、白ゴマ・黒ゴマ・黄ゴマ・金ゴマに分かれます。
 黒ゴマは全国的に栽培され、気象災害(冷害、低温)の年に収穫量が極端に減収したり収穫皆無のこともあり、北限は岩手県北部から青森県南部地帯で、金ゴマ、茶ゴマ、白ゴマは、関東以南(茨城県)あたりまでが栽培地として適当だということです。

サムネイル画像をクリックすると拡大写真が見られます
 
 
  • 種蒔き 5月 5日
胡麻は極端な酸性土壌を除けば、どのような土壌にも適応するということのようで、播種の前の土作りとして4月中旬に粒状の苦土石灰と微生物活性資材の「地力山」散布してから起耕しておきました。
土が落ち着いたところで、5月5日に畝間が60cm(推奨では75〜80cm)、株間はほぼ15cm(推奨では15〜20cm)ほどになるように5〜6粒づつ播種をしておきました。
ちなみに購入した種袋に入っていた種は3mlでした。
  • 間引き 6月 8日 (播種から35日目)
この時期でも6日目には発芽をし、その後順調に育ち始めて途中ネキリムシによる被害(ネキリムシは農薬を使用しなくても日中は株元の土に潜るため被害にあった時は速やかに株元の土を探ると発見できます)もありましたが、発芽した以降に最初の間引きは草丈が7〜8cmになった頃に勢いの悪いものを間引いて、更に15cm程度の大きさとなったところで最も勢いの良いものを残して、全部で80株ほどを一本立ちとしました。
 
 
  • 花蕾が出始めた 6月24日 (播種から51日目)
これまでに胡麻の生長過程がどのような経緯を経ていくのか全く分からずに手探り状態で育てていましたが、以前に見た時の草丈は裕に私の背丈ほどあったように記憶していましたが、未だ6〜80cmほどの大きさにしか育っておりませんが、茎から延びた花柄の付け根部分のあちらこちらに花蕾が見え始めてきましたので追肥を施し土寄せをしておきました。

どうも草丈の低いことがちょっと気に掛かります。
  • 開花が始まった 6月30日 (播種から57日目)
発芽後50日ほどの経過をしたところですが、最初の花蕾が開花しました。

それにしても開花が始まったというのに、あまりにも草丈が低かったことが心配で、これから先どの程度の生長があるのかの確認のために6月27日に同じ高さのところに目印の棒を立てて経過の確認をしてみたところ、僅か3日間で18cmとビックリするような生長ぶりでした。
 
 
  • 胡麻の花 7月5日 (播種から62日目)
最初の開花が始まってから次々に綺麗なピンク色をした花が咲き始めてきました。

私の記憶にある胡麻の花は白色だったことを記憶していましたが、どうやら花の色は胡麻の種類によって異なるようで、白色の花は白ゴマや黄ゴマで、金ゴマが写真のように淡いピンク色で、黒ゴマは金ゴマよりももう少し濃い目なピンク色だということのようです。
  • 大きく生長しました 7月30日 (播種から87日目)
花蕾が見え始めた時点では草丈があまりにも低いことから心配をしましたが、開花した頃を境に日毎にびっくりするほど生長し始めて、開花も中段から上段へと進んできた時点では私の身長(175cm)を超すようなものも出てきました。

この後、収穫を迎えた頃には2mほどの高さにまでなったものもありました。
 
 
  • 胡麻の莢 8月5日 (播種から93日目)
胡麻の葉は茎から左右方向に2つの葉がでますが、その上の段の葉は90度の位置でまた左右に葉が出ます。
これは規則的に繰り返しながら最上段まで続きます。

そして葉柄の付け根には、これまた殆どといって良いほど規則的に3つの花蕾がついて、花が咲き終わると3つに莢が扇形に綺麗に並び1節当たり6個の莢が付くことになります。
そして1本当たりの葉の段数は収穫時点では25〜30段となり、莢の数はこの6倍となります。
  • 胡麻の実 8月5日 (播種から93日目)
は実際には朔果(さくか)と言って果皮が乾くと裂開する果実を指しますが、胡麻の実が成熟していく上での4室で形成される子房というのがありこの中に胡麻の実が入ります。
一つの子房の中の胡麻の実の数を幾つか確認ししたところ、18個〜21個も入っていましたので、一つの莢あたりでは概ね80個前後の胡麻の実が入っていることになります。

胡麻の実の色はこの段階では白色ですが、裂開する頃には茶色になります。
 
 
  • 葉の色が変わってきた 8月7日 (播種から95日目)
8月の第一週を過ぎた頃から葉の色が少しづつ黄ばみ始めてきたと思っていたら、黄色くなった葉が枯葉となって次々に自然落下をし始めてきました。

この頃から緑色をしていた莢の色も一番下の方から少し黄ばんできて変化を見せ始めてきました。
  • 収穫も間近 8月12日 (播種から100日目)
上の写真から僅かに5日間ほどしか経っていませんが、葉が下の方から少しづつ黄ばみ始めてきたと思っていたら、早いもので黄色くなった葉が枯葉となって次々と自然落下し始めてきました。

この頃から莢の色も一番下の方から少し黄ばんできましたので、いよいよ裂開も間近となってきたようです。
 
 
  • 莢の裂開のはじまり 8月16日 (播種から104日目)
莢の色が緑色 黄色 茶色に変わってきたと思ったら、莢の4つの子房がそれぞれ先端の方から割れはじめて中から胡麻の実が見えるようになりました。
2〜3段莢が裂開し始めた頃が収穫時期ということですので、いよいよその準備に入ることになります。

莢の先端から割れはじめることにより中の実が衝撃を与えると飛び出して地面にこぼれ落ちますので、注意して作業をしないとこぼれ種の発芽が心配です。
  • 収穫物の収納容器 8月16日 (播種から104日目)
一般的には刈り取ったゴマは10株程度を結束して軒下やビニールハウスなどの雨や露が当たらず日が当たる場所に、シートかむしろ(筵)などを敷いて立てかけて乾燥させることがとられているようです。
今回は約80株ほどですので普段庭木などの剪定の時に使用している伸縮式のガーデンバック(150リッター)を使用して、保管してあったほぼ200リッターはあると思われるビニール袋をその中に入れて切り取った胡麻が収納しできるようにしてみました。
 
 
  • いよいよ刈取りの準備 8月17日 (播種から105日目)
いよいよ刈取りの作業に入りますが、莢が2〜3段裂開をしたとはいえ上段の部分の葉が未だに黄ばんできたとはいえ緑色なものが残っており、このようなものは簡単に手で切り落すことができました。
先端部分にはまだ花蕾や花が残っていましたが、先端から約15cmほどのところの莢は十分大きくなっていましたので、この部分から切り落とし、裂開した1段目のところで刈り取ることにします。
  • 刈取りと乾燥 8月18日 (播種から106日目)
収納容器の準備ができたところで早速収穫をすることにしましたが、3ヶ月とチョットでの収穫ができることになります。
収納容器のビニールまでの高さは約1.1mということから、この高さを飛びだすものは切り取って裂開した莢の中から実が飛び出さないように収納し、ビニール袋の中で乾燥させて胡麻の実が容易に収穫できるようにてみしました。
ちなみに最後の刈取りは8月24日で最初の刈取りから6日間で終了しました。
 
 
  • こぼれ種の発芽 8月26日 (播種から114日目)
莢の裂開が始まってから、いよいよ収穫のための葉落しの作業をしている時にチョットした振動を与えることで裂開した莢の中から胡麻の実が飛び散りましたので、かなり注意をしながら刈り取り作業をしましたが、それでもあちこちにこぼれ種が発芽し始めました。
胡麻の実は軽いことからちょっとしたことから意外なところにまで飛び散り、その後もあちこちで発芽しましたので十分に刈取り時や乾燥・収穫時での注意が必要ですね。
  • 乾燥が終わりました 9月6日 (播種から125日目)
刈取りを済ませ収納容器に入れてからは、夜間は雨露をしのぐために小屋の中に入れ、日中は日当たりの良い場所に出し入れをしながら乾燥をさせましたが、最初のころに比べ日増しに色が変わり持ち運びでも軽くなってきたのが実感でき、最後の刈取り後より11日目で乾燥が終了しました。

さて、この後の胡麻の実の収穫はどんな面倒なことが待ち受けているのやら・・・。
 
 
  • 乾燥した莢と胡麻の実 
前述もしましたが、莢が乾燥すると胡麻の実も熟成して綺麗な薄茶色に変化しますが、裂開した莢の中の胡麻の実は写真でもお分かり頂けると思いますが、チョットした振動を与えただけで莢の中から飛び出すことが分かりました。

だた少し厄介なことは、刈取り時にかなり未熟な莢があって乾燥と同時に胡麻の実が莢の中で黒やこげ茶色の不良品となり、これが良品と入り混じっていることから良品不良品との選別でなり面倒な作業となりそうです。
  • 胡麻の実の収集作業 9月7日 (播種から126日目)
刈取り後は乾燥のために収納容器の中に切り口を下にし穂先を上に向けた収納しましたが、ブルーシートを地面に敷いて胡麻の実ができるだけビニール袋の中に集まるように、裂開した莢が下向きとなるように天地を逆に入れ替えた後に、枝の先端部分をもって左右に振ったり収納容器をもって2〜30cm持ち上げたところから地面に落とすことを数回繰り返すことによて胡麻の実の収集ができ、最後にブルーシートの上に取り出した莢の中からは殆ど胡麻の実は残っていませんでした。
 
 
  • 選別した胡麻の実 
写真左側はしっかりと大きくなった莢の中で育った良品の胡麻で、右側のものが枝の先端部(上部)の刈り取った時点で莢があまり大きくならず未熟な状態のまま乾燥し、結果的に皮だけとなってしまって黒くゴミの状態となった不良品です。

胡麻の実の収穫後のゴミや不良品の選別にあたっては、最初は目の細かい篩(ふるい)を使用して実施し、最後は唐箕の原理を利用して以下のような方法でゴミや不良品の仕分けをすることができました。
 
  • 胡麻の実の選別方法について
昔ならご近所に唐箕 (とうみ)もあったのですが、今ではそのようなものもなく風で小さな軽いゴミを飛ばすという唐箕の原理を利用して、折良く手頃な風(風速5m前後)が吹いていたので、ブルーシートの上に一輪車(60×80cm角)を置き高さを調整しながら胡麻の実を一輪車の中に落とすという作業を4〜5回ほど繰り返したでしょうか、少しは良品も飛ばされるということはありましたが無事に選別は完了しました。
手頃な風が吹いているようなことことのない場合では、扇風機を使用して強風のレンジで代替実施してみることも良いのではないかと思います。
  • 収穫した胡麻の実 9月7日 (播種から126日目)
このようにしてやっと胡麻の実の収穫にまでこぎ着けましたが、収穫できた胡麻の中からはほぼ完全といって良いほど不良品の除去もできて、ビニール袋に入れて軽量してみましたが、事前に試算してみた1,500g(1.5kg)よりもかなり上回った1,800(1.8s)の収穫ができ大変満足できるものとなりました。
 


胡麻の栽培と収穫にあたって気の付いた事項

今回の胡麻の栽培を経験して、ネットなどの参考資料も活用させていただきましたが、播種から収穫に至るまでの気の付いたことを列記してみました。

・ 播種にあたっての畝幅と株間株については推奨では畝幅:75〜80cm、株間:15〜20cm
     とあるが、実際には作業的にも畝幅:60cm、株間:10〜15cmで良いと思われます。

・ 刈取りをした後に乾燥のために立てかけておくが、裂開した莢の中から実が簡単に出ますので
     天地を逆にして立てかけて乾燥させると実が莢の中から自然落下するので効率的です。

・ 莢の中で未熟なまま育った胡麻の実は、乾燥することによって黒く小さな塊となり食べられない
     ので、収穫後に選別の手間が掛かるため刈取り前に痩せた枝のものや未熟な莢は取り除く
     ことが良いと思います。

・ 自家用としてだけで良いのであれば、今回のように種は僅か3mlだけで(株数:80本)したが、こ
     れでも自家消費としては十分過ぎる量だと思いました。

・ こぼれ種の発芽のことを書きましたが、刈取り時のみならず乾燥や選別などのあらゆる作業での
     移動などによってこぼれ種は防ぐことができませんので、できるだけ移動の少ない作業を
     することが良いと思います。   収穫後に散乱した個所でかなり泣かされました。(笑

・ 最後になりますが、最初の思惑とは違って収穫時の選別作業は結構面倒なこともありましたが
     栽培をされてみる価値は十分にあると思いますので是非お試しになってみて下さい。